裏切り ss 艦これ。 【艦これSS】提督「敵の襲撃ついでに俺が死んだことにする?」【長門】

【艦これSS】失って気付いた大切な人(side darkness):艦隊コラテラル ブロマガ解説

裏切り ss 艦これ

金色の月明かりと人工灯によって照らされた夜の街。 とある一軒のバー。 カウンター席が六つだけとこじんまりとしている。 ジュークボックスより流れるジャズをBGMに、店主はグラスを拭き、カウンター席に座る男は一人酒を口へと運ぶ。 とても静かな雰囲気が続く中、一人の来客者が扉を開いた。 長く綺麗な黒髪と整った顔立ち、和服がとても似合う美しい女性は男の隣へと腰を下ろし店主に酒を注文する。 程なくして差し出された酒を女は一気に飲み干し、 『ここにはよく来るんですか?』 隣に座る男に話し掛けた。 突然話し掛けられた男は不快感を露にする事もなく、優しい口調で答えた。 『えぇ、まぁ。 よく足を運んでいますね。 貴女は初めてですか?』 『はい。 偶然ここの事を耳にしたので足を運んでみたんです』 『そうですか。 でも俺が言うのもなんですが……もっと若い女性向けのお店とかあったでしょう?』 『いえ、どうも雰囲気的に落ち着かなくて……』 『なるほど。 まぁ人の好みは色々ありますからね』 『……少し、私の話を聞いてもらえないでしょうか?』 男は答えない。 ただ眉間に皺を寄せ口を固く閉ざす。 『それじゃあここから先は私の独り言です』 女はグラスに満たされた酒を見つめ、静かに口を開く。 『……私はとある鎮守府に所属している艦娘です。 当初そこに着任していた提督はそれはもう酷い輩でした。 疲労困憊の艦娘を己の昇進の為だけに酷使し大破していても出撃させる事は当たり前、些細なミスも許さず失態を犯せば暴力を平気で振るう……そんな人でした。 そんな行いが上層部に知られてその提督は解雇、そこで新たな提督が来たのですが……私達はまた同じ様な扱いをされるのではないか、そんな思いからその提督を酷く拒み続けました』 男は強くグラスを握り締める。 ミシミシと音を立て今にも割れそうな程彼の手には凄まじい力と、そして怒りの感情が露になっている事が伺える。 その様子を横目に見た女は目を伏せる。 彼女の顔にはハッキリと後悔の念が色濃く現れていた。 しかし口はまだ閉じられない。 『今思えば解体……いえ、それ以上の処罰を受けていても可笑しくない事をしていました。 暴言、命令無視による独断出撃、そして暴力……、それでもその提督は私達を責める事を一切せず身体を張って鎮守府と私達との関係を改善しようと努めていました。 ですが私達はそれすらも虚言だと信じなかった……結果、彼に最低な仕打ちをして鎮守府から追い出してしまったんです』 そこでようやく、女の口は閉ざされた。 場の雰囲気を変えんとタイミングを見計らったかのように演奏が終わり、次の曲がジュークボックスより流れる。 相変わらず我関せずと言った様子でグラスを磨き続けている店主は店の奥へと引っ込む。 そして隣に座っていた男は、何も言わずただ眼を閉じグラスを強く握り締めていた。 その手は小刻みに震えている。 『……一度進んだ時計の針は二度と戻りません。 『あ、こんな所にいたのでありますか提督ど……いえ、旦那様!』 雪の様に白く綺麗な肌と肩まで届く黒髪が特徴的な少女が来店した。 その瞬間口を閉ざし沈黙を貫いてきた男の顔に明るい笑みが浮かび始める。 それと対照的に女の顔には驚愕と困惑が入り混じった色が浮かんでいた。 妻ならば夫を迎えにいく事は当然の義務と思いますが?』 『つ、妻!?』 あきつ丸の言葉を信じられないと言った様子で狼狽する赤城に、彼女は鼻で一笑に伏すと提督の手を取り席から立たせる。 『ま、待って下さい提督!』 カウンターに代金を置き店を後にしようとする二人に赤城は慌てて提督の腕を掴み制止する。 その様子を黒く濁った瞳で、地面に落ちている汚物を目にするかのように冷たく睨んだあきつ丸は赤城の手首を取り捻り上げた。 『自分の大切な大切な旦那様に指一本触れないでほしいでありますな、赤城』 『あ、あきつ丸……! お、お願い! 彼と……提督と話をさせて!』 『……旦那様、自分は少しこの女と話があります。 店の外で待っていてもらってもいいでありますか?』 あきつ丸の要求に提督は頷き店から出て行く。 それを見届けてあきつ丸は掴んでいた手首を離し赤城を解放した。 されどその瞳には絶えず敵意が孕んでいる。 『随分と身勝手でありますな赤城殿。 旦那様が……提督殿がこの一年間どれだけ辛い思いをして生きてきたか、おわかりですか?』 『…………』 『提督殿は当時提督としての責務を全うせんと全力で務められていました。 どれだけ艦娘達から暴言暴力を振るわれようとも決して諦めず、貴方達の為に……。 ですがそれを赤城殿、貴方達は裏切りました』 『た、確かに私達は提督に酷い事をしたわ! だからもう一度、信用してもらう為に私達は……!』 『では聞きますが……どうやってそれを証明するおつもりでありますか?』 あきつ丸の言葉に赤城は口篭った。 『提督殿に慕うフリをしながら影で陰口を叩き続け知られれば罵り嘲笑う……心を踏み躙る行いを何度も繰り返し続けてきた貴女達が何を言ったところで旦那様はもう信じません。 あの人こそが自分の居場所、だからあの御方の為ならば何でも出来る覚悟が自分にはあります。 その証拠にこの指輪を、あきつ丸に下さったのですから』 左手の薬指に光る指輪に赤城は力なく床に座り込んだ。 大本営より新たに導入されたシステム……錬度が上限に達した艦娘のみに行える、限界を突破し更なる強さを手に入れる。 その媒介として戦場にいても邪魔にならないと言う理由により選ばれた形が指輪であること、やり取りが夫婦としての契りを結ぶ事からケッコンカッコカリと名付けられた。 実際赤城はその指輪を目にした事がある。 シンプルなデザインだが銀色に美しく輝く指輪。 しかし当初提督を毛嫌いしていた為に誰一人錬度が上限に達していてもケッコンカッコカリをする者はいなかった。 あきつ丸の指に嵌められている指輪は、そのケッコンカッコカリ用の指輪ではない。 血の様に鮮やかな赤い輝きを放つ宝石が埋め込まれた、仮初としてではなく本物の夫婦としての契りを結ぶ結婚指輪。 『それでは旦那様が待っているのでそろそろお暇するであります。 赤城殿も早く鎮守府に戻られた方がいいと思うのであります』 『ま、待って! お願い話を……!』 『誉ある一航戦である赤城殿ともあろう艦娘が他人の旦那を寝取ろうとは……同じ艦娘として恥ずかしい限りであります』 やれやれと言いたげに溜息を吐き店を出て行くあきつ丸。 その背中を見送り一人店内に残された赤城は……大粒の涙を零した。 [newpage] 全ての切っ掛けは秋雲が趣味で描いてる漫画だった。 提督こと俺を主人公とし、自分……秋雲をヒロインとした内容のラブストーリー。 それから秋雲に頼めば描いてくれると言う話が大きく膨れ上がり、そんなに欲しかったら自分で描けばいいと言う秋雲の発言により……鎮守府は今最大の危機を迎えている。 彼女の放ったその一言より、鎮守府では今創作活動が流行となっている。 自分で言うのもアレだが、皆から慕われている。 提督としては勿論、一人の異性としても。 鎮守府に着任した提督が俺一人だから、異性に対し興味を抱く対象が己である事は当然とも言うべきか……。 兎に角俺は皆から慕われている。 そうした思いから自分を主人公とした所謂少女マンガを描く艦娘が増えた。 最初は人と主張したソレがどう見ても宇宙人にしか見えなかった程の画力も、秋雲の同人誌活動の手伝いの報酬として指導を受け尚且つ自分だけの作品を作ると言う執念により今はプロ顔負けの腕前と上達した。 別に誰を登場人物にさせようと、俺は特に咎めはしない。 それが彼女達にとってストレス発散になってくれるのなら寧ろ喜ばしい。 艦娘と言う兵器と言えどその心は人間の、年頃の少女と変わりないのだから。 問題は……その漫画の所為で現実と己が描いた妄想とがゴッチャになってしまっている事にある。 『提督、そう言えば今日は私達が結婚して丁度一年目になりますね。 私としてはその、そろそろ子供が欲しいのだけれど』 『は? 結婚って……ケッコンカッコカリの事だろ? 確かにしたけど、遂一週間前の事じゃ……』 『……提督、今日はエイプリルフールではありませんよ? 夕日が綺麗なあの日、誰もいない波止場で私を抱き締めて愛の言葉を囁いてくれたでしょう。 他にも結婚式を明日開くとウェディングドレスを着て執務室にやってきた艦娘もいれば、人の夫に手を出すなと敵意を剥き出し挙句暴力沙汰にまで発展しかけた事も少なからずあった。 『提督、死んで下さい』 『いきなり死ねとかお前頭大丈夫か?』 『妻がいる前で白昼堂々他の女と浮気をする方が何を言っているのやら』 『いや浮気って……秘書艦だろ』 『それはこっちの台詞です大井さん。 提督は私と……神通と永遠の愛を契ってくれました。 現実と妄想の区別が付かないのですか?』 『どんぐりの背比べって諺知ってるか神通』 『……なるほど。 アンタが元凶ねこの泥棒猫。 間違っていないが、彼女達は違う意味として取っている。 漫画だけではない。 中にはどれだけ頑張っても絵が上達しない艦娘もいる。 雲ひとつ無い快晴。 広大に続く青一色に染め上げられた空。 太陽は燦燦と輝きその下を小鳥達が気持ち良さそうに泳いでいる。 本日の気候は良好。 まさにピクニックに行くには最高のロケーションであろう。 本日も深海棲艦の襲撃もなく平和な時間が流れた鎮守府では、駆逐艦達の無邪気な笑い声で包まれている。 食堂では暴飲暴食する空母達に間宮の悲痛な叫び声が上がる中、夕立は提督と手を繋ぎ散歩をしていた。 優しく、しかし何があっても離すまいと握り締められた二人の薬指には銀色の指輪が嵌められている。 それが意味するものは……結婚、心から永遠の愛を誓い合った印。 数多くの艦娘がいる中で夕立は妻として選ばれたのだ。 二人は互いの名前を呼び合う。 彼は夕立と、そして彼女は提督ではなく彼自身の本名を。 心地良い風が頬を優しく撫で上げ、波打つ音をBGMに二人は熱い抱擁を交わす。 提督さんビックリだわ』 『ぽい?』 『提督……君には失望したよ。 僕と婚約したのに……僕だけを生涯愛するって言ったのに……!』 『ちょっ! 落ち着け時雨! その包丁どっから持ってきたんだ!』 意外な艦娘が文才を持っていたりと驚かされる中、結局修羅場である事に変わりない。 今から止めろといっても最早手遅れなのは言うまでもない。 このままでは鎮守府が内部壊滅を起こしてしまう。 深海棲艦による仕業ではなく身内による痴情の縺れによるものなど実に馬鹿馬鹿しすぎる。 「て言ってもどうすればいいのやら……」 「ちょっと探してたのよアドミラール!」 ずかずかと、不機嫌を露にしたビスマルクがやってくる。 その後ろには彼女をお姉さまと慕うプリンツの姿もあった。 「ビスマルク……どうかしたのか?」 「フフン、これを見なさい!」 言ってビスマルクが差し出したのは……一枚の絵に古代人が残した壁画に近い何かがそこに沢山描かれていた。 「……何コレ?」 「どう? 私の力作の漫画よ!」 「ま、漫画? これが!?」 「流石ですビスマルクお姉さま!」 得意げな表情を浮かべ胸を張るビスマルク。 そんな彼女を称えるプリンツ。 相変わらずな二人のやり取りよりも、彼女が口にした漫画の存在が強烈過ぎて思考はそっちにばかり集中してしまう。 これの何処が漫画なのか。 確かに綺麗なコマ割がされているが、その中に描かれているものが全く相応しくない。 早い話が下手過ぎる。 幼稚園児が漫画を描いたと言えばまだ納得出来るが……。 これを力作だと疑わず見せに来たビスマルクの自信は凄いが、それ以前に上手だと疑わない原因を作っているのは言うまでも無く、プリンツによる影響が大きい。 どんな事をしても凄いと彼女が褒めるからビスマルクは信じて疑わない。 「あまりの出来栄えに声も出ないようね」 「あぁ……色んな意味でな」 「もっと褒めてもいいのよ?」 「……あぁ、お前だけは本当に変わらないから大好きだよ」 大きい暁で慕われているビスマルクは、今この殺伐とした鎮守府にいる俺の心を癒してくれた。 ひとしきりビスマルクとプリンツを撫で、満足そうに去っていく彼女達を見送った後俺は執務室へと戻る。 因みに彼女の描いた漫画の内容は人間と艦娘、国籍を超えた愛の物語……らしい。 登場人物が誰か確認する必要はあるまい。 「はぁ……俺どうしたらいいんだろ」 「見~つけた。 提督、探したよ?」 我が鎮守府が誇る癒しキャラの瑞鳳がやってくる。 その手に持っているのはいつもの玉子焼きだ。 彼女の得意料理……と言うよりは唯一作れる料理が玉子焼きしかない。 それでもその味は間宮や鳳翔が作る物よりも美味いと断言出来る。 腕時計を見れば丁度午後三時を過ぎたところ、彼女はオヤツ代わりとして作ってきてくれたのだ。 「執務室に行ってもいなかったもん。 折角作った玉子焼きが冷めちゃうじゃない」 「ごめん瑞鳳。 ちょっと見回りをしてたらな」 「……まぁいいや。 はい提督、瑞鳳の玉子焼き……食べてくれりゅ?」 「食べりゅぅぅぅぅぅっ!!」 お決まりの言葉を口にし、早速玉子焼きを口へと運ぶ。 仄かな温かさに加え咀嚼する度に玉子と砂糖の甘さが口腔内一杯に広がっていく。 「うん今日も相変わらず美味い……ん?」 急激に意識が遠のき始める。 全身から力が抜けていき立っている事もままならず、俺はそのまま床へと倒れた。 「ずい……ほ……?」 「瑞鳳の作る玉子焼きをずっと食べたいって言ったのに他の勘娘とイチャつくなんて酷いじゃない。 そこには誰もいない、海が見える一軒家のテラスにて、ただ甘い言葉を囁きあい玉子焼きを食べさせ合う俺と瑞鳳の物語を……。

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【艦これSS】失って気付いた大切な人(side darkness):艦隊コラテラル ブロマガ解説

裏切り ss 艦これ

叢雲「バレンタイン?!」 甲高い声が部屋に響く。 話しかけていた吹雪は驚いた様子で叢雲の顔を見つめる 吹雪「う、うん、司令官にあげないのかなって」 叢雲「私が?あげるわけないでしょ」 吹雪「そっかぁ。 あげるなら一緒に作ろうと思ったんだけど……しょうがないよね。 一人で作るよ」 自分の予想が外れ消沈する吹雪。 叢雲はその様子を見ながら 叢雲(言えない。 実ははすでに準備万端でラッピングまで完璧に仕上げてるなんて言える筈ない) と、実は図星だった事を隠しつつ、うなだれ部屋からでていく吹雪を見送った 叢雲(去年も結局渡せなかったし……素直に吹雪のノリについていけばよかったかも) 後悔後先に立たず。 素直になれない彼女は、吹雪へ再度声をかける勇気などない 叢雲(っとこんな事してる場合じゃないわね。 気にしなくていいからさっさと作業終わらせなさいよ」 提督「ふむ。 今日は機嫌が悪いようだな。 仰せのままに作業を進めるとしよう」 普段の彼女らしい一と言ったら十で返り殴ってくるような口調を聞いて、とりあえず体調が悪い訳ではないと確認し安心する提督 叢雲のギロリと睨んでくる様な目線を感じつつも、そしらぬ顔で作業を進める 叢雲(あーーもうっ。 なんでこう……ツンツンしちゃうんだろう) 彼が心配して声をかけてくれたのになぜ自分はこうなのか、彼女は意にそぐわぬ反応をしてしまった事に後悔を感じた 叢雲「……あんたさ」 提督「ん?」 叢雲「二月十四日って何の日か分かる?」 提督「急にどうした?何かの謎かけか?」 叢雲「質問に質問で返すんじゃないわよ。 何の日か知ってるかって聞いてるの」 提督「十四日か……うーん」 提督は作業を止め、手を額にあてる。 その姿はさながら「考える人」のようなポーズだ 提督「思い出した。 バレンタインだな」 叢雲「よく分かったじゃない。 あんたみたいのには関係ないイベントでしょうに」 フフンと鼻で笑う叢雲 提督「そんな事はないぞ。 これでも毎年、結構な数を貰う」 叢雲はその言葉に驚きと嫉妬を感じつつ、「嘘つきなさいよ」と提督に強い口調で言うと 提督「……といっても艦娘達からの義理チョコだがな。 社交辞令というやつだ」 叢雲「そ、そういう事ね。 そりゃあんたみたいのに本命あげるモノ好きなんている筈ないもの」 提督「はは、でもまぁ……一度でいいから貰ってみたいな、本命チョコとやらを」 叢雲「叶わない夢程儚い事ったらないわ」 提督「厳しいなぁまったく」 提督は苦笑しつつ、休めていた手にペンを取り作業を始めた 叢雲(そんなモノ好きが近くにいる事……気づきなさいよ、バカ) 素直になれない自分が悪い、そんな事は分かっている 叢雲(何かきっかけがあれば……私だって……) ・ ・ ・ ・ ・ 二月、海沿いの鎮守府は強く吹き荒れる冷たい風にさらされていた 提督(寒い寒い。 部屋の暖房の利きが悪すぎる。 明石あたりにいえばよくなるかな) 提督は備え付けの暖房機器を自身の部下に修理させようと目見つつ、いつものように机に座り執務をすすめる 提督(しかしこの前の叢雲……なんだったのだろう) 急にバレンタインがいつかという質問をしてきた事 いくらが基本的に俗世から離れ軍に従事し、戦場以外へは鎮守府からほとんどでない生活をしているとはいえ そのような公然たる行事を知らない筈がない しかも自分は男だ。 回りにいる部下達が艦娘とはいえ元は人間であり、性別は女子 いやがおうにも意識してしまうであろう 提督(もしかして……) 提督(俺にチョコを?) 悶々と考え始めるとその妄想は止まらなくなる 提督(叢雲が俺にチョコをくれたら……飛び上がる程嬉しい) 期待がどんどん膨らむ。 というのもこの男、態度にはでないが叢雲に好意を抱いていたのである 提督(今思えばあいつに出会ったのは一昨年か。 最初はなんて我の強い奴かと思ったが) キツイ性格、提督の叢雲に対しての簡単な第一印象だった 何がキツイかというととにかく、物腰がキツイ 何をやれだの、何をやるなだの指図するだけでも上から目線でかつ高圧的 正直、付き合いが浅い内は叢雲の事をあまりよく思っていなかった 提督(けど、本当は誰よりも責任感が強くて仲間思いだ) 少し前の事である。 自身の組んだ艦隊が劣勢になりピンチであった時、真っ先に支援に向かった艦娘 それが叢雲だった 彼女は前回の戦いで損傷しているにも関わらず、弾薬も持たず槍一本で戦場へとかけつけたのである 叢雲「もう大丈夫よ。 私が来たからには安心なさい」 深海棲艦の攻撃が激しい中、彼女が一人でやってきて艦娘達にかけた第一声がそれだった その言葉は嘘では無く、只一人で深海棲艦の群に立ち向かい一隻、又一隻と次々に槍で敵の体を貫いていき 敗戦の色濃かった艦隊に勇気を与え、そして勝利に導いたのである それ以来叢雲は他の艦娘にも慕われる様になり、キツイ口調も彼女なりの照れ隠しだとわかると 逆にそれを茶化す者まで現れるようになった 提督(いつしかあいつの事を気にかけるようになって……今ではずっと秘書艦にしているが) 無謀な事をまたしでかさないかと心配になった提督は、叢雲を自身の秘書艦へと任命する 最初は気乗りしていなかった彼女だが、提督が親身に接っしたおかげか 今では率先して作業を手伝っている 提督(好きだから秘書艦か、我ながらあさましい) 自身の欲望を満たす為にだけ、重要な役職を与える事に対して罪悪感を感じつつも 隣で真剣にペンを動かしている彼女をみて満足する日々 提督(恋情というのは、人を駄目にする節があるというがその通りだ) 一旦、作業を止めコーヒーを一口飲む。 ほろ苦い味が口いっぱいに広がる 提督(まぁ……待つとするか。 占領海域に遊弋する深海棲艦を討伐に向かった水雷戦隊が、想定していた数より多い敵と遭遇する 数でおしてくる相手に歯が立たず、負傷し陣形もバラバラ、士気も下りいよいよ全滅かと諦めかけていたその刹那 単身で仲間たちの元へとかけつけ槍一本で相手の陣地に切り込んでいく一人の少女がそこにいた 叢雲「もう大丈夫よ。 私が来たからには安心なさい」 深海棲艦達は思わぬ形で陣形に入り込まれとまどったのか動きが鈍くなる それを見逃さない叢雲の槍は次々と獲物を仕留めていった しかし、それでも数の暴力は覆される事は無かった 一旦体制を整えた深海棲艦達は冷静に叢雲へその矛先を向けたのである 叢雲「キャァッ!」 避けても避けても次々と砲撃を繰りだされる。 無論、全てを避けきれる筈もなく ドカァン 叢雲「こ、こんなの……痛く……ないわよ」 強がりを吐きつつ被弾しながらも深海棲艦へと特攻をかけるが 動きが鈍くなった彼女へ容赦ない砲撃が浴びせられる 叢雲(ハァッ…ハァッ……いよいよ足も動かなくなってきたわね) そして、彼女は口にこもる血をペッと吐き出しながら言う 叢雲(戦いの中で死ぬなら本望だわ……) 死を覚悟したその時である 遠方から大きな砲撃音が鳴り響く ドォォン 目の前の深海棲艦達が次々と爆発していく 叢雲(……良かった、間に合ったのね) 叢雲の読み通りだった。 正規の増援による砲撃。 あの距離から深海棲艦を一撃で沈めるといえば恐らく戦艦なのだろう、と彼女は悟る 叢雲「遅いのよ……まったく……」 彼女は元々、増援がくるまでの時間を稼ぐ為だけに戦っていたのだった そして 叢雲「…………っ」 バシャン 彼女は心地よい砲撃音に包まれながら気を失い倒れこんだ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ~入渠室~ 入渠室、艦娘達が戦場で負った傷を癒す場所 そこで横たわり治療している叢雲に一人の男が近づき、彼女の手をとって呟く 提督「……叢雲」 叢雲「ん……何よ……」 呼吸するだけでも痛い全身の傷 彼女は痛みに耐えながらかすれた声で返答した 提督「良かった、良かった……生きてて……」 それを知ってから知らずか彼女の手を強く握りしめ、提督は涙を流す 叢雲「ちょ、離しなさいよ……って」 叢雲「あんた……泣いてるの?」 提督「……」グスッ 叢雲「大の男が……泣くんじゃないわよ。 司令官がそんなんじゃ示しがつかないわ」 叢雲は初めて見る異性の泣き顔にとまどいつつ吐き捨てるように言った 提督「示しなんてどうでもいい。 俺の部下が無事で……それだけ分かればそれで」 叢雲(……自分の部下だから、たったそれだけの理由で?) 叢雲「なによそれ……」 今まで何人も司令官を見てきたがこんな奴いなかった 自分の為に涙を流す、そんな司令官は 提督「頼むからもう自分を犠牲にする様な事はやめてくれ」 提督「もしするんだったら俺にいえ。 その時は俺も一緒に行く」 叢雲「一緒に行くっていったって……あんたは艦に載ってるだけでしょ」 提督「そんな事はない。 部屋の中がまだ寒いのか、少し白みが掛かっている 叢雲(今度こそ渡そう。 すごくうれしいよ」 提督は言いながら二人の幼い艦娘の頭をなでる 電「喜んでもらえてよかったのです」 響「……ハラショー」 コンコン ガチャ 吹雪「失礼します!司令官、チョコレートをお渡しに参りました」 金剛「へーい提督ゥ!たっぷり愛を込めて作ったデスヨ!」 次々と鎮守府に所属している艦娘から提督へチョコレートが手渡される 提督は艦娘達一人一人へ丁寧にお礼を言う 提督「そうか。 わざざわすまないな」 照れた様子で言う提督の横で、秘書艦の叢雲は執務を進めていた そして行事の様子を横目で見ながら 叢雲(なによデレデレしちゃって) ヤキモチを焼いていた 提督「みんなありがとう。 おかげで今後もがんばれるよ」 積まれたチョコレートの束が今にも倒れそうなのを手で支えながら、提督は大きな声で言った ・ ・ ・ ・ ・ ・ 午後、女子から男子へお菓子が渡される儀式も終わった様で 提督と叢雲は粛々と書類作業を行っていた 提督「さて今日の分の作業は大分済んだし、叢雲は部屋に戻っていいぞ」 叢雲「……そう」 明るい声の提督とは裏腹に、叢雲は覇気のない返事をする 提督「どうした?体調でも悪いのか?」 叢雲「そんなんじゃ……無いわよ」 提督「ふむ?」 叢雲「随分、もらったわね。 それ」 叢雲は塔の様に積まれたチョコレートを見ながら言った 提督「まぁな。 去年よりも多いんじゃないかな。 艦娘も増えたから当たり前かもしれんが」 活き活きと語る提督 叢雲「よ、良かったじゃない」 提督「ああ、司令官冥利に尽きる……なぁんて言い方は変かな」 提督は少しはにかみながら、本当に嬉しそうな様子でチョコレートの塔を見る 叢雲(はぁ……やっぱり無理。 用意していたチョコレート。 恥ずかしいからやっぱり渡さないと決めていたのに あそこで逃げてしまったせいで逆に変に思われたかもしれない。 逃げずにそのまま渡せば…… いや、適当に私がもらったのよとか言って弁明すれば良かったのかも 彼女の脳内で様々な思考が躍る 叢雲(そうだ。 知らないフリしよう。 適当に落ちてたとか言って無理やりしらばっくれてやるのよ) 叢雲(機嫌が悪いフリをして怒鳴り散らしてやればいいんだわ。 そしたらいつもの様にあいつも黙るわよね) 叢雲はよしっと呟きベンチを立つ。 これで今回はしのげる。 そう思って後ろを振り返ると ジャリッ 提督「こんなところにいたのか」 小石を踏み歩く音と共に、提督がそこに現れた 叢雲「へ?」 提督「急に飛び出していったから心配したぞ」 叢雲「あ、え、あ、えっと……なんでここが」 戸惑い焦る叢雲を見ながら、提督は優しく語りかける 提督「空母組に教えてもらったよ。 艦載機で探してくれたようでな」 良く耳を澄ますとたしかに艦載機のエンジン音がする 叢雲「そ、そういう事ね……」 提督「で、どうしたんだ?何があったんだ?」 叢雲「うるさいわね!人がどこへ行こうが勝手でしょ!あんたには関係ない!」 提督「関係ある!」 提督は怒った表情で言う 叢雲「……っ」ビクッ 提督「関係あるさ。 絶対に」 叢雲「どういう、ことよ」 提督「……さっき部屋で隠してたのさ、もしかしてそれ俺にくれる予定だったんじゃないか?」 叢雲「ち、違うわよ……こ、これは私のじゃなくて」 叢雲「これっ、部屋の外に落ちてたのよっ!あ"っ、私が買ってきたもんじゃないからっ!あんたのじゃないのっ? …はやく、持って行ってよ!」 叢雲は言いながら先程持ち去ったチョコレートを乱暴に提督へと差し出す 提督「……そっか」 提督はゆっくりとした動作でそれを受取った。 そして可愛くラッピングされたそれを愛おしそうに見つめる 提督「良かった。 本当に貰いたい子から貰えたよ。 まぁ本人は自分のじゃないって言ってるけど」 提督「俺はそれでも……嬉しいよ」 提督は口ごもりつつ言う 叢雲「は?じゃあ、貰いたかった相手って……あ、あたし?」 提督が口まわりを人差し指で浅くぽりぽりと掻いて叢雲をじっと見つめると、彼女は手をバタバタさせて慌てた 提督「ありがとな、叢雲」 叢雲「~~~っ!」 叢雲は口を金魚の様にパクパクさせて顔を真っ赤にする 叢雲「なんなのよ、ほんっと、あんた……なんなの!」 叢雲「一人で恥ずかしがって全力で空回って……バカみたい」 叢雲「こんな事なら最初から素直に渡せばよかったわよ!」 提督「すまなかった。 口でちゃんと伝えるべきだったな。 俺はお前が好きで……だ、だからチョコをもら」 叢雲「すとーーーっぷ!駄目!それ以上は!」 提督「なんなんだ。 人が折角正直に言おうとしてるのに」 叢雲「は、恥ずかしくてジッと聞いてらんないのよ!このバカ!」 提督「むぅ……ならどうしろというんだ」 叢雲「あーちょっと待ってなさい私も心の準備が……ふぅ……うん。 よし」 叢雲は何かを決心した様に息を吐くと、提督の方へスタスタと歩いて近づく 少しでも動いたらぶつかり合う様な距離。 叢雲は身体を少しちぢこませて、俯きながらじっとする 提督「叢雲?」 叢雲「ほら、好きにしなさいよ」 提督「えっと、じゃあ」 提督がそっと手を叢雲の頭に載せて、優しく撫でると 叢雲「あんた……バカにしてるの?撫でてどうするのよ!」 提督「す、すまん。 どう対応したらいいか分からなくてな。 何分女性と付き合った事がないもので」 叢雲「ほんっと駄目ねあんたは!ったく……」 叢雲「抱きしめなさい」 提督「え?」 叢雲「抱きしめなさいっていってんのよ!」 提督「あ、ああ」 提督は繊細なガラスを触るかのように、腕をそっと彼女の背中に回した 叢雲「…………悪くないわ」 提督「そ、そうか、なら良かった」 叢雲「あんたの心臓、すごいバックンバックンしてるわよ」 提督「緊張してるんだ。 しょうがないだろう」 叢雲「……可愛い所あるじゃない」 叢雲はいいながら、提督を抱きかえす 外に座っていたせいで冷え切った身体がどんどん暖かくなっていくのがわかる 彼女はそのぬくもりを与えてくれる相手を見据える為、顔を上にあげると 叢雲「あ……雪」 ふわっと降りてくる白い塊が提督の肩に落ちてくるのを見て呟く 提督「ほんとだ。 最近降らなかったのに」 少しずつ雪のふる量が増えてくる。 このままいけばそれなりに積もる様な降り方である 提督「寒いだろう。 中に入るか?」 叢雲「……いい。 vip2ch.

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【艦これSS】提督「敵の襲撃ついでに俺が死んだことにする?」【長門】

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楽士ルートで進めてましたけど、ソーン戦の選択肢で帰宅部ルートにも戻れたので、両方のエンディングを見れました。 ゲーム難易度はNORMALだったのもあってか簡単な部類でしたね。 まぁ、コンボ失敗すると仲間があっさり沈んじゃいますけど。 今回は各エンディングだけさっくりと。 全体の総括とか楽士達の紹介とかクリア後特典の話は後日に回しますー。 ラストの優しげなアニメーションにちょっとしんみり。 どれも良かったけど……生きてるシャドウナイフさんの姿に思わず「山田っ!」って叫んじゃった(笑) 制作時期もスタッフも違うからだと思いますけど、アニメの最終回とキャラデザ全然違いましたね。 何となく誰が誰か分かったんですけど、主人公だけはどれか分からなかったなー……。 ちなみに、お気に入りの二人の台詞はこちら。 ネタバレ回避の為、反転させておきます。 ・天本彩声 戦闘前 「あんた……最悪の人間ね。 私も色んなクズを見て来たけど、ここまで醜悪な人間は初めて…… アンタを信じて皆ここまでやってきたのよ!? 辛い現実に帰ろうって力合せて来たんでしょ!? なんともおもわないのかよっ!! ……私っ、あなたのことが……大好きッ、大好きだったのに……!」 撃破時 「呪って、やる…」 ・神楽鈴奈 戦闘前 「全部嘘だったんですか……一緒に頑張ろうって……ここまで頑張ってきたじゃないですか」 「……そうか、先輩はソーンに操られてるんですね…そうに決まってます。 そうに決まってる……」 「だって先輩が私を裏切る筈ない! 待っててくださいね!すぐに元に戻してあげます! あははは!あははははははは!」 撃破時 「せんぱい……」 「嘘ですよね。 嘘なんですよね」 「なにか、作戦があるんですよね。 なにかーーー」 彩声には本当ごめんね、としか言えなかったです…そして、鈴奈ちゃんが憐れだった……。 その後、ラスボス( アリア)と対決。 Veritas の暗い曲調がぴったりでした。 最後は 現実世界が悲惨になるにつれて絶望した人が増え始め、 メビウスの人口が増えていき、少しずつ消えていく(死ぬ)。 ……まぁ、どっちにしても、何も変わらないんですけど。 そんなわけで、プレイヤー的には期待通りの背徳感と救いの無さを存分に味わえました。 でも、今書いてるSSの主人公の気持ちになると、楽士ルートは選べても、 最後の選択肢で楽士エンドを正直選べないなーと思っちゃう。 あそこで、楽士エンドを選べるのは、 人を裏切ることに快感を覚える人間か、 世の中を憎んで憎んで憎み切っている人間か、 現実に戻ったら終わりな人間か、 それらのいずれかだと思う。 世界を道連れに自殺するようなものですし。 だから、ルシードの主題歌は「スーサイドプロトタイプ」なのかも。 もしそうなら、楽士ルートがメディア化される時、主人公は自殺に関係する設定がいいような気がします。 ソーンが目を付ける理由にもなりますし。 そこから、現実に戻ろうとするかはストーリー次第で。 というか、有料DLCでもいいので、「スーサイドプロトタイプ」がフィールドBGMで流れるダンジョン追加されませんかねぇ。 できれば、帰宅部主人公でボス版ルシードと戦ってみたい。 もう一人の自分と戦うって、なんかワクワクします……しません? 残念ながら落選しちゃって参加できませんでしたー、うわーん。 ギリギリ応募できて、休みも無事にゲットできたんですけどね、ううう……。 折角、これだけ好きになれた作品ですし、この機会に声優さんや関係者のお話を聞いてみたかったなぁ。 っていうか。 を見ると、めっちゃ楽しかったみたいですしね~いいなぁ。 そして、私と同じように落選した人たちのコメントが……(ホロリ) でも私みたいな、にわかじゃなくて、もっと大好きなファンの人が誰か代わりに行けたと思えば! だから、悔しくなんか、悔しくなんか、ない、ぞ……(シクシク という訳で気晴らしに大井町の高倉珈琲店に行って、SSの続き考えてました。 私、マンゴーに目が無いので!期間限定で30%オフだったのも丁度良かった。 美笛ちゃんじゃないですけど、美味しいもの食べてる時が一番幸せですね~ そんでもって、私もいくら食べても太らない体が欲しい(笑).

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